アストロ・トランジットで「夜中0時ごろに南中する日」を調べても、自宅の庭やベランダでは、建物や木に隠れて、その時間ずっと見えるとは限りません。「高度15度以上」のような固定の基準だと、実際の見え方とずれてしまいます。
そこで作ったのが、スマホを持ってぐるっと1周するだけで、方位ごとの「空が見える高さ」を測れる無料のWebツール「ほしみる地平線」です。会員登録は要らず、広告も入れていません。
👉 ほしみる地平線を開く(スマホのブラウザで開いてください)

ほしみる地平線でできること
- 空が見える高さを、方位ごとに測る:カメラの十字をスカイライン(空と建物・木・山の境目)に沿わせて、1周します。1〜2分ほどです
- 結果をグラフと、カメラ映像の重ね表示で確認:実際の景色と合っているかを、その場で見られます
- ずれたところを手で直す:画面を止めて、点を上下にドラッグして直せます
- Stellarium に取り込む:景観のZIPファイルを書き出せます。CSV・JSONでも書き出せます
- アストロ・トランジットで、隠れる時間を引いた「実際に見える時間」を確認:観測地も引き継ぎます
測り方は3ステップ
測るのは、望遠鏡を置く場所、光学系の高さです。近くの障害物は、1m動くだけで見え方が変わるためです。
- 合わせる:太陽(夜は北極星)に、画面の十字を合わせて、方位の基準をとります。日中なら太陽、夜なら北極星です。曇りで太陽が見えないときは、緯度経度がわかる山や鉄塔などの「ランドマーク」を、基準にできます。地図から選ぶと、測定地からの真方位を計算するので、磁気の影響を受けません。それも使えないときは、スマホのコンパスと磁気偏角で代わりにできますが、精度は粗くなります(±8°前後)
- なぞる:十字を、スカイラインに沿わせながら、その場でゆっくり1周します
- 戻る:もう一度、最初のもの(太陽など)に十字を合わせます。ここで、1周のあいだにたまったずれの量がわかるので、結果から差し引きます
太陽は、必ずスマホの画面(カメラ映像)で見てください。肉眼で直接見たり、双眼鏡や望遠鏡ごしに使ったりするのは危険です。
測る前に、任意で「端末補正」もできます。壁などにスマホを立てかけて30秒止めると、そのスマホのジャイロが、1分にどれだけずれるかを測ります。次の話に関係する機能です。
実験してわかった、スマホのジャイロのずれ
スマホで方位を測るときは、方位を知る手段(センサー)を何にするかが、一番の悩みどころでした。作る前に、自分のAndroid(Chrome)で、実験用のページを作って試しました。
- ジャイロ(回転量):静止させて3分置いただけで、方位が約10°ずれました(1分あたり約4°)。同じ向きに戻ってくる1周のテスト(53秒)では、約3.4°ずれて戻ってきました
- コンパス:静止しているときは安定していました。ところが、回している最中は、ジャイロより最大で約57°も遅れたり、狂ったりして、止めると追いつきました
ジャイロは、短い時間なら正確な代わりに、少しずつずれ続けます。コンパスは、回している最中は使えません。この結果から、次のような組み立てにしました。
- 方位の基本はジャイロ(回転量)にして、基準の方位だけ、太陽や北極星で決める
- 最初に、静止して測った「1分あたりのずれ」を差し引く(端末補正)
- 最後に、最初の目印に戻って、残ったずれを、時間に比例して配分する(ループ閉じ)
- コンパスは、回している最中には使わない
静止で測ったずれの率で補正すると、1周のずれが約3.4°から、0.5°ほどに収まる見込みでした。ただし、これは1台のAndroidの結果です。機種によって違うはずなので、端末補正は、測る前にその場でできるようにしています(結果は、その端末に12時間だけ保存されます)。
結果を確認して、直す
1周したら、方位と高さの展開図が出ます。北を左端に、東・南・西と並べた図です。

「重ねて確認」を押すと、カメラの映像の上に、測った地平線を重ねて表示します。緑の線がスカイライン、その下の赤い領域が「隠れる範囲」です。カメラを動かして、実際の景色とずれていないかを見比べられます。画角(カメラに写る広さ)は、スライダーで合わせます。
ずれているところは、「編集」で直せます。画面を止めて、10°ごとに並んだ白い点を上下にドラッグします。元の測定値は残るので、「1つ戻す」や「全部元に戻す」もできます。
Stellarium に取り込む
「Stellarium用ZIP」を押すと、景観のZIPファイルができます。Stellarium の「空と表示の設定」(F4)→「景観」タブ→「新しい景観を追加/削除」で、ZIPを読み込めます。Stellarium 23.4 で、実際に読み込んで、スカイラインの形と向きを確かめました。

スマホで測って、パソコンで Stellarium 用のZIPを作りたいときは、「共有リンク」をコピーして、パソコンのこのページに貼り付けて「読み込む」と、取り込めます。CSVとJSONでも書き出せます。JSONは、共有リンク(5°刻み)より細かい、1°刻みのデータです。
アストロ・トランジットで、実際に見える時間を確認する
結果の画面の「アストロ・トランジット(撮り頃天体検索)で調べる」を押すと、測った場所を観測地にして、アストロ・トランジットが開きます。地平線のデータも、一緒に渡されます。
天体の詳細ページでは、高度のグラフに、赤い帯(あなたの地平線の高さ)と、赤い線(建物・木・山に隠れて見えない区間)が重なります。「観測できるのは22:08〜4:03(5時間54分)。隠れるものが無い場合は6時間31分。36分減っています」のように、文章でも出ます。

「今夜のおすすめ」では、各天体に「見える時間 6時間32分」のような表示が付きます。隠れる分が大きいときは、「(隠れる分−1時間20分)」も出ます。まったく見えない天体は、一覧から除くこともできます。

地平線を持っている人が、アストロ・トランジットを、URLに観測地を付けずに開いたときは、測った場所が、観測地の初期値になります。この動きは、パネルのチェックで、オフにできます。
気をつけたいこと
- 動作を確認しているのは、Android の Chrome です。iPhone は、まだ確かめていません
- 精度は目安です。結果に出る「精度の目安」は、計算上の見積もりで、実際の景色と照らして測ったものではありません。太陽で基準をとった場合、見積もりでは±2°前後です。重ねて確認で、ずれていないかを見てください
- 真上に近いところは苦手です。カメラを、仰角70°を超えるほど上に向けると、方位が定まらなくなります。スカイラインをなぞる用途では、まず使わない高さです
- 測るのは「空が見えるか」だけです。ピアや三脚の脚、子午線反転での望遠鏡の干渉は、別の話なので、含まれません
- 建物の建て替えや、木の伐採・成長があったときは、測り直してください。結果には、測った日が残ります
写真や位置情報は、外に送りません
測定はすべて、スマホのブラウザの中で処理します。カメラの映像や位置情報を、サーバーに送ったり、保存したりはしません。測った結果は、そのスマホの中(ブラウザ)に保存されます。共有リンクを作るときも、位置は0.1°(約10km)に丸めています。
スマホの時計がずれていると、太陽の位置の計算がずれるので、開始のときに、このサイトのサーバーの時刻と見比べて、ずれていたら補正します。このとき、位置や画像は送っていません。
自分で押したときだけ外に出るものが、3つあります。ランドマークの「地図から選ぶ」を押すと、表示している範囲の地図画像を、地図のサーバー(地理院地図、OpenStreetMap)から取得します(カメラの映像や測定結果は送りません)。「アストロ・トランジットで調べる」を押すと、観測地の緯度経度がURLに入って、アストロ・トランジット側に渡ります。「現在の地平線に設定」を押すと、5°刻みの簡易データを、wooder.info 共通のクッキーに入れます(アストロ・トランジットなどに自動で渡すためで、位置は0.1°に丸めます)。
まとめ
個人が趣味で作っている無料のツールなので、内容を変えたり、終わりにしたりすることもあると思います。大事な地平線は、JSONやZIPで書き出して、手元にも残しておいてください。
これで、「この天体は、うちの庭から、何時から何時まで見えるのか」を、具体的に確かめられるようになりました。使ってみて気づいたことがあれば、コメント欄で教えてください。