「このM74、今から狙っても遅くない?」「今夜、どの銀河を撮ろうかな」——天体写真を撮っていると、こういう撮影の”時期”に関する悩みが地味に多くありませんか。
赤経・赤緯から「夜中0時ごろに南中する日(=一晩を通して高い高度で観測できるシーズン)」を手計算するのは意外と面倒で、私自身、撮影対象リストに入れていた銀河・星雲数点の南中日を一つずつ手計算していました。「これ、天体名を入れたら自動で出るツールにすればいいのでは」と思い立ち、そのまま作ってしまったのが今回紹介する「アストロ・トランジット」です。
ちなみに「トランジット(transit)」は、天体が真南(子午線)を通過する=南中することを指す英語の天文用語です。「アストロ・トランジット」は、その名の通り天体(アストロ)の南中(トランジット)を調べるためのツール、という意味で名付けました。
「アストロ・トランジット」でできること
メシエ110天体・コールドウェル109天体・視直径2.5分角以上のNGC天体1,500件超、あわせて1,700件以上の銀河・星雲・星団を対象に、天体撮影の時期を調べられるWebツールです。
- 正引き:天体を選ぶと、夜中0時ごろに南中する日(=狙い目シーズン)がわかる
- 観測に適した時間帯:今日・今夜、実際に何時から何時まで狙えるかを、月明かりも考慮したグラフで確認できる
- 逆引き:日付を指定すると、その夜に南中する撮影向きの天体を提案してくれる
- お気に入り:気になる天体を保存しておき、南中日が近い順にまとめて確認できる
使い方①:天体を選んで、夜中0時に南中する日を調べる
トップページから、天体を選んで観測地を入力するだけです。

「天体」のプルダウンからM74を選択し、観測地(未指定なら東京都で計算されます)を確認して送信します。

結果画面では、天体の基本データ(赤経・赤緯・等級・視直径)とあわせて、夜中0時ごろに南中する日が大きく表示されます。

観測地を変えて計算し直すこともできるので、遠征先の座標を入れて「その場所なら撮れる時期」を確認する、という使い方もできます。
使い方②:今日・今夜、実際に何時から何時まで撮れるかがわかる
「夜中0時ごろに南中する日」は、あくまで年間を通した”狙い目シーズン”の目安です。実際に今日カメラを出すべきかどうかは、月明かりや天文薄明の状態によっても変わってきます。そこで天体詳細ページには、その日・その天体を実際に観測できる時間帯を、月齢も踏まえて自動計算する機能を追加しました。

グラフでは次のことが一目でわかります。
- 日の入〜日の出の「夜間」と、天文薄明が終わって本当に空が暗くなる「暗夜」の違い
- 月が出ている時間帯(輝いているほど明るい月=影響が大きいことを表示)
- 実際に高度15度以上で観測に適した時間帯(太線)——薄明中は太線にならないので、「南中はしているけどまだ空が明るい」時間帯と区別できます
- 現在時刻(赤い点線)
今夜の月齢・輝面比もあわせて表示されるので、「今夜は新月に近いから淡い天体も狙いやすい」「満月に近いから明るい天体向き」といった判断もこのページだけで完結します。
お気に入り天体を登録できます
気になる天体は「☆ お気に入りに追加」ボタンで保存しておけます。一覧ページでは、登録した天体を今日から見て南中日が近い順に並べ替えて確認できるので、「そろそろ狙い目シーズンに入る天体はどれか」がひと目でわかります。

※ お気に入りはブラウザ内(localStorage)に保存される仕組みで、サーバーには送信されません。会員登録なども一切不要です。
使い方③:今夜のおすすめ天体を調べる
「今夜のおすすめ」ページでは、日付・明るさ・視直径・天体の種別を指定して検索します。

検索すると、その日に南中日が近い天体が一覧で表示されます。等級・視直径・南中日・南中高度がひと目でわかるので、機材や好みに合わせて選べます。

収録天体は1,700件以上
メシエ110天体・コールドウェル109天体という定番カタログに加えて、視直径2.5分角以上のNGC天体(メシエ・コールドウェルと重複するものは除く)約1,540件を追加しています。データはNGC/ICカタログのオープンデータプロジェクトOpenNGC(CC BY-SA 4.0)を利用しました。マイナーだけど大きくて撮りやすい天体も見つかるはずです。
観測地はワンタップで呼び出せる
観測地の入力は、緯度経度を手入力するほか、
- ブラウザに保存しておいた観測地から選ぶ
- 現在地を自動取得する
- 地図をタップして選ぶ
という3通りの方法で入力できます。よく行く遠征先を保存しておけば、次回からワンタップで呼び出せます(保存先は端末のブラウザ内なので、他の人に共有されることはありません)。
そもそも「南中」とは?
天体は毎晩、東の空から昇って真南(子午線)を通過し、西へ沈んでいきます。この「真南を通過する瞬間」が南中で、南中時の高度(南中高度)が一晩のうちで最も高くなります。つまり南中そのものは特別な日にだけ起きる現象ではありません。
ポイントになるのは、南中する時刻です。南中時刻は季節によって少しずつ早まっていく(1日あたり約4分ずつ)ため、ある天体が「夜中0時ごろに南中する」タイミングは年に一度しかありません。この時期を中心に前後2〜3週間ほどが、宵のうちから明け方まで高い高度で観測・撮影できる「シーズン」ということになります。「アストロ・トランジット」は、この「夜中0時ごろに南中する日」を天体ごとに自動計算しています。
まとめ
「この天体、いつ撮ればいいんだっけ」を毎回検索したり計算したりしていた方は、ぜひブックマークしてみてください。
ご意見・ご要望があれば、コメント欄で教えていただけると嬉しいです。